アルツハイマー病の
原因は脳のゴミだった。
 アルツハイマー病患者の脳を解剖すると、そこには明確な特徴があります。全体的な萎縮と、脳の表面に大量に浮いた老人班と呼ばれる銀色のシミです。このシミはアミロイドβ(ベータ)という粘着質のたんぱく質でできています。
 アミロイドβは情報伝達の過程で生み出される物質であり、本来は目に見えない小さなものです。健康な脳であれば、不要な分はゴミとして分解され、脳の血管を通じて体外に排出されます。しかし何らかの理由により排出がうまくいかなくなったり、過剰になったりすると、アミロイドβ同士が結合し、どんどん脳の表面に溜まり始めます。
 同時に、アミロイドβが付着した神経細胞の内側では、タウと呼ばれるたんぱく質が増加し始めます。そしてアミロイドβが溜まり始めて数年が経つと、その毒性によって、タウもまた蓄積していきます。すると神経細胞内での情報伝達が阻害され、さらにタウもまた強い毒性を持つようになるため、正常な神経細胞は次々と死滅していきます。
 つまり、アミロイドβとタウという、二つの異常たんぱく質の蓄積が、アルツハイマー病を引き起こす直接的な原因だったわけです。
アルツハイマー病は
25年も前から進行していた!
 ダイアン研究では、アルツハイマー病のリスク遺伝子ApoE4を持つ「キャリア」と呼ばれる人たちと、「ApoE4」を持たない「ノンキャリア」と呼ばれる人たちの脳の違いを調べました。
 まず、「脳のゴミ」であるアミロイドβから見てみましょう。@のグラフは、キャリアの人とノンキャリアの人の、アミロイドβの量の変化を示したグラフです。
 このグラフから、キャリアの人の脳内では、なんと発症の25年も前からアミロイドβが溜まり始めているのがはっきりと分かります。
 次にAタウの濃度を見てみましょう。こちらのグラフでも、キャリアの人の脳内では、発症の25年も前からタウが増加し始めています。
 つまり、アルツハイマー病になる人たちの脳では、発症の25年も前から脳の神経細胞がダメージを受け始めているということです。
 脳の神経細胞がアミロイドβやタウによって破壊されていることは、記憶をつかさどる脳の部位「海馬」に着目しても分かります。
 Bは海馬の大きさの変化を示したグラフです。こちらもアルツハイマーを発症する15年前から海馬は徐々に小さくなり始め、10年前から急速にそのスピードが速くなっています。
C出典:Clinical and Biomarker Changes in Dominantly inherited Alzheimer's Disease より作成
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