脳機能改善(脳内炎症の抑制・アミロイドβ蓄積の抑制・アルツハイマー型認知症改善。神経細胞の保護)、認知機能低下予防(脳内炎症予防・アミロイドβ蓄積の予防・学習記憶低下予防)、学習記憶改善(記憶関連遺伝子の発現の増加、神経細胞ネットワーク増強)
アルツハイマー病は
プラズマローゲンの不足
脳神経細胞を強力に保護する
 2015年の厚生労働省の調査によれば、日本には今、約520万人の認知症患者がおり、さらに約400万人の軽度認知障害(MCI)、いわゆる予備軍の方がいます。
 また、ただの老化だろうと思い込んだり、認知症と診断されることを恐れて受診を避けている、いわゆる「隠れ認知症」患者も300万人以上いると推定されます。
 団塊の世代が75歳になる2025年には、国内で1300万人もの人々が認知症になると言われ、65歳以上の高齢者に限れば、3人に1人が認知症とその予備軍になります。
 ここに隠れ認知症の人たちも含めると、実に1800万人規模の人たちが認知症、およびその予備軍になるという、恐ろしい未来の姿が浮かび上がってきます。
ヒト試験にて効果を確認
 プラズマローゲンは細胞膜の材料でもあるリン脂質の一種です。心臓や骨格筋など、酸素を大量に消費する部位に多く存在し、特に脳に多いことが知られています。
 体内のプラズマローゲンの量は加齢に伴って減少するだけでなく、アルツハイマー病患者の脳でもプラズマローゲンが減少していることが報告されています。
脳の健康とプラズマローゲンの関係
「プラズマローゲン」とは、人間や動物の体内に含まれる脂質成分であるリン脂質の一種です。プラズマローゲンの特徴として、一般的なリン脂質とは異なる特殊な構造を持つことが挙げられます。また、人間の体内にあるリン脂質の約2割がプラズマローゲンだと言われており、特に脳や心臓、骨格筋など酸素の消費が多い部分に多く存在するとされています。
 プラズマローゲンが特に注目されるようになった理由として、1999年に報告された、アルツハイマー型認知症の方に関する論文が挙げられます。加齢に伴い、血液中のプラズマローゲン量は4割ほど減少していくと考えられていますが、アルツハイマー型認知症患者の脳内でもさらにプラズマローゲン量が低下していることが確認されたのです。
 プラズマローゲンのはたらきとしては、認知症の発症にかかわるとされる脳内の炎症や、アミロイドβタンパク質の蓄積を抑えること、そして、情報を伝えるはたらきのある神経細胞に栄養を与えることで、神経細胞を守り、生存率を高めることがマウスや細胞試験でも確認されています。
 さらに、これららのはたらきにより、学習記憶能力が高まることが確認できました。アルツハイマー型認知症と診断されていた方を対象に、プラズマローゲンを抽出した食品を摂取したモニター試験でも、その多くで症状の緩和が確認されています。
脳の健康にはプラズマローゲンが不可欠
 アルツハイマー病は、介護する家族の問題だけでなく、社会問題に発展するケースも多くみられます。最大の原因と考えられているアミロイドβの蓄積は、アルツハイマー病発症の25年前(40代頃)から始まるといわれており、実際の発症時にはこれ以上蓄積できないほどまでに増加しています。そのため、高齢になってから注意する病気だと過信してはいけないのです。
 プラズマローゲンとアルツハイマー病発症の関係について研究をしたところ、老人斑形成に関わるアミロイドβを抑えること、同時に脳内での炎症を抑えることがわかりました。また、過剰な炎症反応が続くことにより起こる神経細胞死を起こさないように神経細胞を保護することも確認されています。
神経細胞の延伸効果
 海馬では生涯を通じて新しい神経細胞が生み出されることが分かってきたので、アルツハイマー病を発症した場合でも早期であれば、その症状を和らげたり元の状態に戻したりすることが可能だと考えられています。
 そこで、プラズマローゲンが神経細胞の生育に影響するのかどうかを細胞培養時に鶏由来のプラズマローゲンを添加して神経細胞の状態を観察したところ、プラズマローゲンを添加したものでは、元の神経細胞の長さと同じくらい突起を伸ばした細胞と、元の神経細胞の長さよりも2倍以上の長さの突起を伸ばした細胞が数多く確認されました。
 このことから、プラズマローゲンには神経細胞間の新たなネットワーク構築を促進させるとともに、情報伝達の活性化を促す働きがあることが示されました。
神経細胞へのダメージを防ぐ
鶏プラズマローゲンの構造
 脳の神経細胞に炎症を起こす物質を加えると、細胞がダメージをうけてLDHという酵素が細胞外に多く放出されます。試験の結果、オレイン酸とコリンが含まれる鶏由来のプラズマローゲンは、炎症を起こす物質を加えても、細胞へのダメージを防ぐことが確認できました。
 プラズマローゲンは高い安全性と作用が認められていることから、機能性表示食品に登録されています。今後は、プラズマローゲンの由来や成分の組み合わせの違いによる効果の差についても注目が集まることが予想されます。
※この研究内容は徳島大学との共同研究結果として、日本薬学会第140年会(京都)で発表されました。
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